‘’脱原発は世界の潮流だ!”とか、“世界は原発ゼロに向かっている!”と、一所懸命に訴える人が少なくないが、実態はその真逆。世界全体では、原子力発電の利用は増加傾向にある。
World Nuclear Association が公表した “World Nuclear Performance Report 2017 – Asia Edition” によると、2016年における世界の原子力発電に関する動向は概ね次の通り。
(1) 9GW以上の原子力発電設備が新規に竣工し、そのうち7GWe以上はアジア地域。
(2)年初から年末までに、原子炉は441基から448基に増加。
(3)10基が竣工し、3基が閉鎖されたが、原子力発電設備は8GWの増加。
(4)原子力発電量は、35TWh増加し、2476TWh。これは、新規原子炉の竣工による増加と既設原子炉の性能改善の結果。
《原文より抜粋》
More than 9 GWe of new nuclear capacity came online in 2016, of which more than 7 GWe is located in Asia. By the end of 2016 there were 448 reactors around the world, up from 441 at the start of the year. Ten reactors started to supply electricity and three were closed down, resulting in a net increase in nuclear capacity of just over 8 GWe. The amount of electricity supplied by nuclear globally increased by 35 TWh to 2476 TWh. This increased generation is the result of both additional generation from new reactors coming online and continued performance improvements from the existing fleet.
2011年3月の東日本大震災による福島第一原子力発電所(1F)の事故以降、“脱原子力は世界の潮流”との風説が今でも盛んに流されている。
だが実際は、世界全体では横這いで、アジア地域では増加傾向を示している。
特に、2011年から2012年にかけて著しく落ち込んだ原子力発電量〔Figure 14.〕と原子力発電設備容量〔Figure 15.〕は、2012年以降4年連続で増加傾向となっている。
2017.10 World Nuclear Association “World Nuclear Performance Report 2017 – Asia Edition”
2017.10 World Nuclear Association “World Nuclear Performance Report 2017 – Asia Edition”
アジア地域での原子力発電量について、日本以外の合計では中国を中心に顕著に伸びており〔Figure 1.〕、日本だけは1F事故以降で急落したまま〔Figure 8.〕。
2017.10 World Nuclear Association “World Nuclear Performance Report 2017 – Asia Edition”
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中国は、近年急速に原子力利用を拡大してきている〔Figure 2.〕。
インドは、ここ10年での原子力利用の拡大が著しい〔Figure 6.〕。
韓国は、2011年の1F事故を契機にいったん原子力利用は縮小した時期もあったが、近年は再び原子力利用が拡大している〔Figure 12.〕。
台湾は、2025年までの原子力ゼロ化を政治的に決めていることもあり、原子力発電量は減少してきている〔Figure 4.〕。
2017.10 World Nuclear Association “World Nuclear Performance Report 2017 – Asia Edition”
2017.10 World Nuclear Association “World Nuclear Performance Report 2017 – Asia Edition”
2017.10 World Nuclear Association “World Nuclear Performance Report 2017 – Asia Edition”
2017.10 World Nuclear Association “World Nuclear Performance Report 2017 – Asia Edition”
以上のことからもわかるように、世界全体でも、アジア地域でも、一部の国を除き、原子力利用は横這いか拡大傾向にある。
1F事故は、アジアの原子力利用国における原子力利用拡大に悪影響を殆ど与えていないのだ。
(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa)