東証一部の売買シェアトップは海外投資家です。公開資料によると直近の売買代金のシェアの7割を超えており、日本株市場は海外投資家の動向次第と言っても過言ではないかもしれません。ひとえに海外投資家といっても米国や欧州など拠点は異なります。東京証券取引所は海外投資家の地域別売買動向を毎月公表していますが、北米、欧州、アジア、その他地域で分けた場合に、日本株市場に最も影響力を持っているのは欧州の投資家とみられます。そこで欧州投資家の売買動向にフォーカスしてみると、ある傾向があることが分かりました。この傾向から近い将来の日本株市場が上下どちらの方向に動くかを予想することができるかもしれません。
図1は東京証券取引所の開示データを元に地域別の海外投資家の取引動向の推移を示しています。なお、本記事の海外投資家とは東京証券取引所の定義に基づくものです。図1から、欧州投資家の売買フローが大きいことが分かります。
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次に欧州の投資家の売買動向が日本株に影響を及ぼしているかを確認するため、図2でTOPIX(東証株価指数)の月次の変動幅と比較してみました。この図から欧州の投資家の売買フローとTOPIXの変動幅がかなり似通っていることが分かります。もちろん、これは過去の分析であり、将来においても同様なことが言えるということではありません。
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欧州投資家の売買動向と同じように売買ができれば投資パフォーマンスを向上できるかもしれません。しかしながら、欧州投資家の動向を事前に把握することは不可能に近く、また、欧州投資家が皆同じように行動するとは考えにくいものです。ただ、図1と図2から欧州投資家の売買フローには平均回帰性があるかもしれないことがわかります。つまり、大きく売り越した後は買う、大きく買い越した後は売る、という傾向がありそうだということです。
各図の期間(2013年1月~2016年10月)における売買フローについて、買い越しまたは売り越しが平均的に何ヵ月続くか調べてみたところ、当該期間では平均2.19ヵ月続くという結果がでました。データが取得できる2006年12月からで見ても2.25ヵ月続くという似通った結果となりました。欧州投資家は平均的に2ヵ月強のサイクルで売買を行っているかもしれません。これを前提とすると、2016年9月は売り越し、10月は買い越しとなっており、11月は日本株相場が大きく上昇していることから11月も買い越しとなっている可能性があります。買い越しトレンドは平均2ヵ月ちょっと続くとすれば12月は売り越しに転じる可能性があり、日本株相場は月間で下落するかもしれません。さらに12月はイタリアの国民投票、オーストリア大統領選挙、FOMCにおける追加利上げなどのイベントを控えており、投資家のリスク回避的な動きが予想される点からも相場が弱含む可能性があるでしょう。
(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)
※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。