インターネット上で流通し、日本では仮想通貨とも呼ばれるビットコインですが、対米ドル相場で700ドルを超え、2014年以来の高値となっています。世界中にビットコインの取引所があり、インターネットを通じて取引ができますが、大きな価格変動を見込んで投資資産として取引する方もいるようです。最近の価格上昇については英国の欧州連合(EU)からの離脱懸念や、軟調な株式市場からの乗り換えと見る向きもあるようです。
ビットコインの取引量をみると、OKCoinとHuobiという取引所のシェアが極めて大きいようで、この二つの取引所は中国の人民元とビットコインの取引をメインで扱っている取引所です。通貨には国の裏付がありますが、ビットコインにはありません。人民元ではなくてビットコインを欲しがる人が多くて価格が上昇するということは、中国という国家が国民によって信用されていない、ということかもしれません。保有している人民元を売って別の資産に換えたいというニーズなのかもしれませんが、あえてビットコインを利用するのは、ビットコインのもう一つの特徴である資金移動の手段という点もあるかと思います。
人民元は海外送金などにおいて資金移動の規制が厳しいことはよく知られています。そこでビットコインを利用すれば規制をかいくぐって、インターネット上で瞬時に海外に資金移動ができるわけです。中国から資金を海外に逃すために人民元をビットコインに変換したのち、ビットコインを他の通貨に変換することで資金を中国から海外に逃していると推察されます。
ビットコインの上昇は人民元をビットコインを経由して他の通貨に換えたいという動きであり、中国からの資本流出を示す一つの証拠といえるかもしれません。図にあるように2013年末のビットコインの急騰をきっかけに、人民元相場は下落トレンドに入っています。そして2015年8月の突然の人民元切下げによって世界中の金融市場に混乱が生じたという流れになりました。最近のビットコインの上昇は人民元相場のいっそうの下落とそれに伴う中国リスクを世界が再認識する可能性を示唆しているかもしれません。
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(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)
※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。