(いまさら聞けない)タカ派?ハト派?利上げって何?


ニュースを聞いていると、「FRBが公開した議事録でハト派姿勢で利上げは見送り~」のようなことを聞いたことがあるかもしれません。投資家や金融関係者でない限り「FRBって?ハト?利上げって何のこと?」という方も多いかもしれません。米国の利上げについて書いた2014年8月の記事の反響が多かったので、今回は現状を踏まえて再度このテーマについて取り上げたいと思います。

FRBは連邦準備理事会といって、米国の金融政策を策定する理事会のことです。日本でいうところの日本銀行くらいのイメージを持ってもらえれば十分でしょう。そしてFRBのトップがFRB議長、本稿執筆時点ではイエレンさんです。2014年あたりからFRBが米国の政策金利を上げるか、上げるならどのようなペースで上げるのか、ということが金融市場の注目テーマになっています。

また、タカ派、ハト派というのは金融に限らず政策決定において、強行路線をタカ派、慎重路線をハト派といいます。利上げの政策決定においてタカ派は積極的に利上げの推進を唱える人々、ハト派は慎重に判断すべきという人々のことをいいます。ちなみに株式市場ですとブルは強気、ベアは弱気という意味になります。なんとなく似てますが、使われ方は違うので注意が必要です。経済ニュースなどで「FRBがハト派でブル派勢いづく」というのはFRBで飼ってるハトが牛を勢いづかせた?ではなく、「米国の中央銀行が利上げに慎重で、株価が上昇した」ということです。

2015年12月に開催されたFRBの会合で、FRBは政策金利を0.25%引き上げました。政策金利の変更は2008年12月のことで、利上げを決定したのは2006年6月以来です。これほどFRBが利上げに慎重であり、世界中から注目されるのは、金利の上昇は企業や個人などの債務返済負担を大きくするので一般に経済にマイナスの影響があると考えられるためです。それでもFRBが利上げに踏み切ったのは物価上昇(インフレーション)を抑制するためとか、将来米国経済が悪化した際に利下げという選択肢を残しておくため、などが考えられます。

現状ではFRBがどのようなペースで利上げを進めていくのかが注目されていますが、今年の利上げについてはあと1、2回程度ではないかと現時点では予想されています。しかしながら、2014年の頃と違い、現状では米国景気は既にピークアウトした可能性もあり、この前提で考えると今後は以下のことが考えられます。

■利上げしてもしなくても株価が下がる?
一般に利上げで株価が下がる、というのは前述のとおりですが、現状は利上げを積極的に実施する前に米国景気が後退局面に入る可能性が高くなっています。FRBが利上げのタイミングを逃したかもしれないということです。景気循環については、例えば、パン屋さんがパンの売れ行きが良くなった(好景気)のでパン工場をたくさん建てて同じパンを大量生産したところ、お客さんが欲しい量よりも生産量が多くなってしまったり、お客さんが同じパンに飽きて食べなくなったりして、売上が伸びなくなってしまいます。そしてせっかく建てた工場も閉鎖して借金だけが残る・・・という場合は、利上げは借金返済の負担を大きくしますし、利上げしなくてもパンが売れるわけではありません。FRBが利上げに慎重でも景気後退局面はいずれやってきて、景気の先行指標とされる株価の下落が起きるかもしれません。

■米ドル高期待の巻き戻しで円高米ドル安になる?
利上げは米国の金利を上げることになるので、お金を預けるなら日本円を売って米ドルを買っておこう、という動きになるのが一般的です。しかし、FRBの利上げスピードがあまりにもゆっくりなのでFRBの利上げによって米ドル高の時代がくると見込んだ資金の逆流、つまり米ドルを売って円を買う動きが発生しつつあるように思われます。また、米国にとって自国の通貨が高くなるのは米国内の輸出企業にとってマイナスなので米国の産業界を中心に米ドル高を嫌う動きがあると思われ、これも円高米ドル安になる要因として考えられるでしょう。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。