来る4月1日、家庭向けの電力小売が全面自由化される。では実際、どのくらいの人々が、電力の購入先を今の大手電力会社から切り替えるつもりだろうか?
経済産業省の認可法人である電力広域的運営推進機関(広域機関)が2月19日時点までの“スイッチング”の申込み状況を集計したところ、全国計で約23.4万件であった。
(出所)https://www.occto.or.jp/oshirase/hoka/2016-0224_SWsys_start.html
スイッチングとは、電力小売が全面自由化されるのを機に消費者が購入先を変更すること。1月29日時点の集計では、全国計で約5.4万件であったので、3週間で約5倍になった計算。
全国には5641万世帯がいる(2015年1月1日現在;総務省調査)ので、今のところ、切替え予定件数は全体の0.4%程度。
この切替え予定数については、上記の表にあるように、東京電力管内で約16万4千件、関西電力管内で約6万件、北海道電力管内で約3千件、九州電力管内で約2千件、中部電力管内で約2千件、東北電力管内で約1千400件、四国電力管内で約400件、北陸電力管内で約400件、中国電力管内と沖縄電力管内はゼロ。
因みに、経産省が昨年11月18日に発表した資料(※1)では、「8割の人は、少なくとも切り替えの検討はする意向」、「現時点で切り替えを前向きに捉えている(「すぐにでも変更したい」「変更することを前提に検討したい」)人に限っても、25%弱存在する」とのアンケート調査結果が掲載されている。
(※1)
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/denryoku_gas/kihonseisaku/pdf/002_05_00.pdf
だが上述のように、今の時点では、現実はそれほど甘くない。
経産省・広域機関は、3月1日にスイッチングを支援するためのシステムの運用を開始した(※2)。自由化市場における民間活動に、政府が堂々と切替えを勧奨しているわけだ。
(※2)
https://www.occto.or.jp/oshirase/hoka/2016-0224_SWsys_start.html
今回の自由化は“家庭向け(小口需要分野)の電力小売”であるが、“産業向け(大口需要分野)の電力小売”は、2000年以降に順次自由化が進められてきた。それにより、既に電力市場全体の約6割(電力量ベース)が自由化されている。
電力市場では、大口需要分野(産業向け)は比較的儲かる一方で、小口需要分野(家庭向け)はあまり儲からないとされる。
その大口需要分野での自由化の状況を見ると、新電力は834社だが、供給実績があるのは97社、販売シェアは7%程度。(数値の出所は、2015年11月の経産省資料(※3)。)
(※3)
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/denryoku_gas/kihonseisaku/pdf/002_04_03.pdf
比較的儲かる「産業向け」でさえ、この程度しかない。果たして今後、あまり儲からない「家庭向け」で、どのようになるだろうか・・・?
(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa)
※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。