四国電力・伊方原発3号機:再稼働による燃料コスト削減効果は年間約620〜970億円


先週10月26日のNHKニュースなど各メディアで既報の通り、四国電力伊方原子力発電所3号機(89万kW;運転開始1994年12月)について愛媛県の中村知事は今日午前、再稼働に同意することを四国電力の佐伯社長に伝えたとのこと。地元の伊方町も再稼働に同意し、新規制基準の下で再稼働に県と立地自治体が同意したのは、川内原発のある鹿児島県に続いて2か所目。

<報道要旨>
・中村知事「国の考えや四国電力の取り組み、地元の理解を基に非常に重い判断をした。今後、四国電力には安全対策に引き続き万全を期すよう求める」、「出力、コスト、安定供給の3つの要件を満たす代替エネルギーはなく、現状では、安全対策を施したうえで、原発に向き合っていかざるをえない」、「同意する以上は、訓練や安全対策、それに万が一のときに責任を担うことになる」。

・菅官房長官「再稼働にあたって、知事の理解を得られたということは極めて重要だ。引き続き認可や検査など法令上の手続きに基づいて、四国電力が安全確保を最優先に対応することが極めて大事だ。原子力規制委員会の手続きが厳格に、円滑に進められることを政府としては期待したい」、「政府として、省エネルギー、再生可能エネルギーの推進に最善を尽くすなかで、原発については、できるだけ最小化しようという基本方針がある。それに基づき、世界で一番厳しいと言われる基準に合格した原発については再稼働を進めていくという考え方は変わらない」

・伊方原発をとめる会事務局次長「中村知事は、再稼働を認めるかどうかを白紙に戻して考えるとこれまで話してきたが、本当にそうだったのか。反対派の意見を十分に取り入れたのか疑問に思う」

今後、工事計画認可や使用前検査を経てから再稼働となる。この報道にもあるように、実際の再稼働は早くとも来春になると見込まれる。四電が、原子力規制委に伊方3号機に係る審査の申請と、地元自治体への安全協定に基づく事前協議を申し入れてから2年以上が経過して、今回の地元同意に至った。

四電の電気料金は、自由化部門(産業用など大口需要家向け)では2013年7月から14.73%、規制部門(家庭用など小口需要家向け)では13年9月から7.8%の値上げを実施している。これは、伊方原発停止に伴う代替火力発電に要する追加燃料費が莫大であるため。

この値上げは、伊方3号機が13年7月から再稼働することを前提としているが、実際には16年春以降まで待つことになる。他の電力会社のここ一連の値上げについても言えることだが、原発再稼働を織り込んだ値上げ認可にはなっているものの、実際には認可スケジュール通りに再稼働は実施されていない。

この点、認可をした政府関係当局の責任が追及されないのは実に不可解だし、それに対して電力会社や関係者が訴訟など何らかのアクションを起こさないのもまた不可思議。

それはさておき、伊方3号機が再稼働することにより、四電管内の火力発電用の燃料費はどのくらい削減されるのかと言うと、下の式により、年間約620〜970億円が削減可能と試算できる。

①:1年間の原子力発電量 = 89万kW × 24h/日 × 365日 × 稼働率90.9% ≒ 71億kWh
②: 上記①に要する核燃料費 = 原子力発電単価0.86円/kWh × 70億8693万kWh ≒ 61億円
③:1年間で削減可能な火力燃料費 = 71億kWh ×(ガス火力9.55円/kWh〜石油火力14.56円/kWh)= 678億円〜1034億円
④:削減可能費用 = ③ー② = 617〜973億円

(註1)稼働率は、ここ5年間での伊方3号機の稼働率のうち最大のものを仮定。
(註2)原子力発電単価は、認可原価のうち平均値を仮定。
(註3)原子力で代替する火力発電源をガスと石油で分け合うことを想定。

これは私が取り急ぎ行った試算に過ぎないので、政府や電力会社におかれては、公式に試算を行った上で適宜公表されたい。因みに、電気料金値下げは、まだまだ先の話だろう・・・。

(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。