ドイツの研究機関 Fraunhofer ISE が発表した “Electricity production from solar and wind in Germany in 2014” によると、2014年のドイツにおける電力輸出入に関する概要は次の通り。
(1)ドイツ全体の輸出入では、輸出超過〔資料1〕。
(2)フランス、チェコとの関係では、ドイツの輸入超過〔資料2〕。
(3)オーストリア、スイス、オランダ、ポーランドとの関係では、ドイツの輸出超過。
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〔資料1〕
〔資料2〕
(以上の資料2点は、https://www.ise.fraunhofer.de/en/downloads-englisch/pdf-files-englisch/data-nivc-/electricity-production-from-solar-and-wind-in-germany-2014.pdf#search='Electricity+production+from+solar+and+wind+in+Germany+in+2014'より。)
ドイツの発電電力量構成は、再エネ26%、褐炭26%、無煙炭18%、原子力16%、天然ガス10%の順。これが、ドイツが再エネ大国の言われる理由の一つ。しかし、化石燃料の合計との比較で見ると、ドイツは今後しばらく化石燃料依存型が続く見通しである。
日本のマスコミや有識者とされる人々はしばしば、“ドイツは再エネ大国で、しかも電力輸出が超過。だから、原子力ゼロでも電気は足りており、原子力ゼロを達成できている、日本もドイツに倣え!”といった論調を発する。
しかし、それは事実に基づかない 誤認か、意図的な曲解でしかない。そもそもドイツは、どんなに早くとも2022年までは原子力ゼロにはならない。更に、ドイツが輸入超過となっているフランスの発電電力構成では、原子力が73%で圧倒的第1位。
確かにドイツ自身は原子力ゼロ化を進めているが、電力輸出入という面でドイツはフランスの原子力に一定程度依存していることになる。更に言うならば、EUの場合、送配電網が相互に繋がっていることもあって、各国ごとの電源構成を見るのではなく、EU全体の電源構成を見るべき。(実は、東日本大震災前の日本とほぼ同じ姿なのだ。つまり、案外と好い塩梅なのだ・・・)
(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa)
※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。