再生可能エネルギーの普及に世界で最も注力しているのはドイツ。そこでの再エネ事情を実際に体感することも含め、今月、ドイツに行ってみた。最初に訪れたのは、障害者福祉施設の屋根を利用した太陽光発電の現場。
その施設とは、“Werkstatt für angepasste Arbeit GmbH”(障害に合わせた作業場(有);写真1)。ここでは、多くの障害者たちが木材の処理や加工の「作業」をしている。
<写真1>
「障害に合わせた作業場」の工場の屋根では、Grünwerke GmbH(グリューンヴェルケ(有))が2011年9月から太陽光発電の運転を開始している。以降20年間、グリューンヴェルケ社がその屋根を賃貸することとしている。
これは、「障害に合わせた作業場」にしてみれば、太陽光発電のための「屋根貸し」事業。設置面積1,265 m²、太陽光パネル約61,000枚(写真2、写真3)、出力規模186kWpで、昨年の発電電力量は168,000kWh。発電した電気は“Netzgesellschaft Düsseldorf(デュッセルドルフ系統会社)”の配電網に給電している。
<写真2>
<写真3>
グリューンヴェルケ社は、2020年までに風力・太陽光による年間の発電電力量を約500GWh、約22万トンのCO2削減を目指している。
現地で案内してくれた「障害に合わせた作業場」のUlrich Kürten(ウルリッヒ・キュルテン)氏によると、太陽光発電に関する全ての業務はグリューンヴェルケ社が行っており、「障害に合わせた作業場」が単なる屋根貸しに過ぎないとのことだった。
太陽光発電のための設備(ソーラーパネル)は、再エネ発電施設の中で最も設置しやすく、普及速度も最速。再エネには、水力・地熱・バイオマス・風力・太陽光があるが、近年、世界的にも顕著な伸びを見せているのは太陽光。
日本では、2012年7月の“再エネ・固定価格買取制度”の施行とともに設置件数が飛躍的に伸びた太陽光発電。施行以降、買取価格の低下や電力会社への接続保留など課題は少なくない。
先月、倉敷市で児島市民交流センターの屋根を同市から借り受け、岡山市のNPO法人が主体の太陽光発電施設が稼働を開始した。出力21.6kW、年間発電量約25,000kWh。その全量を固定価格買取制度により34.56円/kWhで中国電力に売電し、収入の4%、年約34,000円が賃料として市に支払われる。
今後、こうした公共施設の『屋根貸し』による太陽光発電が増えていく可能性がある。上記の「障害に合わせた作業場」での先行例などは、福祉施設の財源確保策の観点からも、良き参考になるであろう。
(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa)
※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。