今月10日付けの英国ガーディアン紙によると、 今月9日にデンマークでは、“異常に多くの風力”によって、デンマークの全電力需要の140%分の発電量となり、隣国のドイツ、ノルウェー、スウェーデンに輸出されたとのこと(資料1)。
《記事冒頭から原文を抜粋》
Wind power generates 140% of Denmark's electricity demand Unusually high winds allowed Denmark to meet all of its electricity needs – with plenty to spare for Germany, Norway and Sweden too
<資料1>
(出所:http://www.theguardian.com/environment/2015/jul/10/denmark-wind-windfarm-power-exceed-electricity-demand)
デンマークやドイツからの報道では、将来的には“再エネ100%化”を、との論調が少なくない。しかし、風力発電は天候によって発電量が左右される『不安定電源』。自国の自給率を超えて輸出するほど発電するにしても、いつそうなるかは予測不可能。今回のデンマークのような状況が頻発していくと、再エネ100%化への期待感が一層高まっていくだろうし、現にそれは幻想ではないとの業界関係者の見解もしばしば報じられる。
《記事中から原文を抜粋》
“It shows that a world powered 100% by renewable energy is no fantasy,” said Oliver Joy, a spokesman for trade body the European Wind Energy Association. “Wind energy and renewables can be a solution to decarbonisation – and also security of supply at times of high demand.”
米国風力エネルギー協会の記事でも、今回のデンマークのことを引き合いにしながら、風力発電の盛んな州における最近の風力発電に係る記録更新について書かれている(資料2)。米国でも、今後ますます風力開発が推進されていくと見込まれている。
<資料2>
(出所:http://www.aweablog.org/wind-energy-keeps-breaking-records-in-denmark-and-here-at-home/)
ここで、上記の2例とも、風力発電を礼 賛しているだけでなく、風力発電の不安定性を明らかにしていることをしっかり認識しておく必要がある。再エネ100%化を目指すことは良いが、それを本当に現実的なものにしていくには、コスト合理的な蓄電システムの普及・定着が必須条件となる。これは、風力発電だけでなく、太陽光発電にも言えること。
日本でも、風力や太陽光を中心とした再エネの推進は既定路線となっている。だが、ただ単に欧米の動向を模倣するのではなく、日本国内の風況や日照条件を十分に勘案しながら、日本は日本に合った形で地道に振興していくべきだ。そうでないと、2012年7月の再エネ固定価格買取制度(FIT)導入前から危惧され、昨年になって弾けてしまった“太陽光バブル”の時以来のように、無用な再エネ不信が起こってしまう。
エネルギー資源を輸入化石燃料に大きく依存している日本では、再エネをコスト合理的に導入 促進していくことは、エネルギー安全保障の観点からも重要なことに違いない。そのためにも、再エネに言えども、 分相応に推進していくことが肝要である。
(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa)
※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。