細川・小泉両元首相の“新潟雪国型メガソーラー発電所”訪問


今月16日の産経新聞ネット記事毎日新聞ネット記事によると、脱原発を訴えている小泉純一郎、細川護熙両元首相が同日、国内初の商業用太陽光発電施設「新潟雪国型メガソーラー発電所」(新潟市東区)を視察したとのこと。

<記事要旨>
・視察したのは出力1メガワット規模の商業用メガソーラーで、年間発電量は一般家庭約180世帯分に相当する100万キロワット時以上。
・小泉氏「自民党は原発の依存度をできる限り低減し自然エネルギーを拡大する選挙公約を忘れている」、「福島事故の原因もまだ分からない。処分場も見つからない。再稼働すれば核のごみは増える。安全対策も十分でない。再稼働の発想はおかしい」、「国が自然エネルギーを支援すれば、(発電比率)30%には20年から30年で到達し、原発の供給力はカバーできると感じた」。
・細川氏「新潟が先駆けになって北国でもソーラーパネルは増えている。農地でも規制を取り払えれば広がりようはあるはずだ」。

完全な“脱原発・再エネ盲進モード”に入っている2人の元首相に対して今さら何を言っても全く無意味なのではあるが、この記事に載っている両元首相のコメントに関して一応申し上げておくべきことは、次の通り。

◎「原発の依存度をできる限り低減し自然エネルギーを拡大する選挙公約」について ・・・自民党が忘れているということはないはず。事実、原発依存度をできる限り低減し、再エネを拡大する路線となっている。

◎「福島事故の原因もまだ分からない。処分場も見つからない。再稼働すれば核のごみは増える。安全対策も十分でない。再稼働の発想はおかしい」について
・・・事故が収束しているとは私も思わないが、事故の原因はとっくに特定されている。
・・・処分場が見つかっていないのは世界共通の課題だが、日本について言えば、処分場が必要になるのは30〜50年後のこと。うかうかしているのはダメだが、まだまだ致命的な時期にはなっていない。現実問題としては、中間貯蔵の延長で十分凌げる。
・・・安全対策は、震災の教訓から来るものに関しては、既に多くの原発で措置済みだが、原子力規制委員会による新規制基準への適合性審査に関して未達であるという話。それは再稼働前提条件の一つとして原子力規制委員長の私文書に基づく運用とされているが、法的にはいつでも再稼働は可能。もっとも、これに対する政治判断が停滞しているのも事実。
・・・再稼働が危険なのではない。危険なのは核燃料の存在であり、それを十分な安全対策の基で管理することが最重要。現在は、原発停止によって収益が生み出されておらず、十分な安全対策のための投資が継続され難い状況にあり、逆に危険。早期の発電再開による安全対策のための原資の確保こそ急務。

◎「国が自然エネルギーを支援すれば、(発電比率)30%には20年から30年で到達し、原発の供給力はカバーできると感じた」。
・・・現在の見込みでは、技術的にも経済社会環境的にも、2020〜30年までの間に再エネ(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)が原子力と同じ供給力を確保することには『絶対』ならない。物事には『絶対』というのはないと言われるが、これについては『絶対』ない。発電規模や安定発電能力の面で無理なのだ。2120年であればあり得るかもしれない。だから、そう感じたのは元首相だけではないのか...?

◎「新潟が先駆けになって北国でもソーラーパネルは増えている。農地でも規制を取り払えれば広がりようはあるはずだ」。
・・・ソーラーパネル(太陽光発電)については、例えば九州電力が今年4月に受け付けた接続契約の申込件数は788件で、前年同月(7053件)より88%減。再エネ発電事業者に求められる出力抑制期間の無制限化や再エネ発電電気の買取価格引下げの影響である。今後更に太陽光など再エネ発電に係る固定価格買取環境が厳しくなることが見込まれ、今後はボロ儲けできなくなるだろう。

尚、私のブログ記事に書いたように、奇しくも両首相の新潟訪問と同じ日、群馬(伊勢崎三和町)では太陽光パネル200枚以上が道路に散乱し、一時通行できなくなったようだ。太陽光発電にも相応のリスクがあるという話。

(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。