22日の東証1部の時価総額が1989年のバブル期を越えたことで「バブル越え」という言葉が飛び交っている。そういえばひと昔前にも似たような言葉を聞いたなぁと思った。「いざなぎ越え」である。
いざなぎ越えとは平成14年2月(2002年2月)から平成20年2月(2008年2月)までの景気拡張期間、つまりITバブル崩壊後の景気の谷からリーマンショック直前にいたる73ヵ月間の景気拡張期が、それまで戦後最長記録であったいざなぎ景気(昭和40年11月(1965年11月)から昭和45年7月(1970年7月)にわたる57ヵ月間)の景気拡張期を越えたことをいう。
先週の株高で時価総額がバブル期を越えたという報道を聞いて、先の景気拡張期に聞いたいざなぎ越えの時の雰囲気に似ているなぁと個人的に思ったわけであるが、いざなぎ越えという言葉はリーマンショックで吹き飛んでしまった。今回、バブル越えという言葉が出てくるあたり、景気は山のピークに近いことを示唆しているのかもしれない。
日本における景気の山と谷は内閣府経済社会総合研究所が決めている。今が景気の拡張期に当たるかどうかはまだ判断されていないが、アベノミクスで始まった株高や企業業績の改善により景気拡張期に当たるというのは間違いないと考えられる。直近の景気の谷は暫定ではあるが平成24年11月(2012年11月)とあり、翌12月から今年の5月末まで数えると今回の景気拡張期間は30ヵ月間に亘ることになる。過去の景気循環において景気拡張期の中央値は30ヵ月(ちなみに平均値は36ヵ月だが平均値はいざなぎ越えの73ヵ月という外れ値に引っ張られてしまう)であり、今回の景気拡張期間は結構な長さとなってきた。
ところで景気後退期の中央値は14ヵ月(平均値は16ヵ月)であり拡張期よりも短いが、これは株価の上昇トレンドは小刻みに長く続くのに対して下落は短期間に大きいという経験則と似ている。株価は景気の先行指数と言われるので似ていて当然といえば当然だろう。株価が景気の先行指数であれば、景気後退よりも先に株価の下落があると考えられる。景気拡張期間が30ヵ月にさしかかった現在の状況は、株価が山のピークに近いこと、そろそろ急落を想定しなければならない時期にさしかかってきているかもしれない、ということは考えておいても良さそうだ。
(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)
※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。