2014年度も3月で終わり、4月中旬から主要企業の本決算発表がはじまる。日本の主力企業には輸出企業が多いため、為替レートの変動は企業業績や株価に与える影響が大きい。
一般に円安が輸出企業にとって良い、といわれる。輸出企業は外貨ベースの売上を日本円で評価するため、事前の想定為替レートよりも円安が進行していれば円ベースでの評価額がかさ上げされるためだ。例えば100ドルの売上があったとする。1ドル=100円のときでは10,000円で評価されるが、1ドル=120円のときでは12,000円となるので、想定為替レートが1ドル=100円であれば、事前の想定よりも2,000円売上がかさ上げされることになる。このことから円安の進行は輸出企業の株価が上昇する要因の一つになっていると考えられる。
ここでポイントとなるのは、輸出企業が想定為替レートをいくらにしているかということだ。想定為替レートよりも円安が進んでいればかさ上げ効果が見込める一方で、想定為替レートよりも円高が進んでいればかさ上げどころか評価減が生じてしまう。以下は典型的な輸出企業として主要自動車メーカーの想定為替レートを挙げた。
トヨタ(7203) 米ドル109円/ユーロ139円 (通期予想)
ホンダ(7267) 米ドル109円/ユーロ138円(通期予想)
日産(7201) 米ドル114.7円/ユーロ138.9円(下期予想)
マツダ(7261) 米ドル115円/ユーロ130円(第4四半期予想)
富士重工(7270) 米ドル116円/ユーロ139円(第4四半期予想)
※3/26時点で取得可能な各社の決算短信から抜粋。正確性を保証するものではありません。
本稿執筆時点における米ドル対円相場は118~119円、ユーロ対円相場は129~130円である。各社米ドルに対しては保守的な想定為替レートになっているが、ユーロに関しては想定為替レートよりも円高になっている。3月から欧州中央銀行(ECB)が国債購入などによる量的緩和政策を導入し、市場にユーロが供給されたことでユーロの価値が下がり、ユーロ安が進行しているためだ。
上記のうち、ホンダと日産は売上に占める北米の割合が高い。ユーロよりも米ドルの影響の方が大きそうだ。マツダは売上に占める欧州の割合が他社よりも高く、ユーロ対円相場の円高はマツダにとって誤算となるかもしれない。マツダの次に売上に占める欧州の割合が高いのは富士重工だが、富士重工は日本国内での売上比率が高いので影響は限定的だろう。トヨタは日本と北米、その他地域がメインで欧州の比率は低めとなっている。発表される本決算に加えて、各社が今後の想定為替レートをどの水準で考えているのか注目したい。
(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)
※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。