2006年に創業300年を迎えたトワイニングですが、ここは世界中の誰もが知る紅茶の老舗であり、英国王室御用達高級紅茶のブランドとして、日本でも知られる名門のブランド、トワイニングの本店です。
トワイニング社の紅茶の味は気品ある香りに加えて、老舗らしい重厚さと貫録の味とでもいうのでしょうか、一服の清涼剤ともなる爽やかさも感じられ、逸品の味として世界中に知られます。
それもそのはず、トワイニングの創業の歴史は長く300年余にも及びますが、創業時から一貫して選りすぐった最良の茶葉を使用し、ブレンド方法も常に努力を欠かさず、試行錯誤しながら最良の方法を探りながら、今に至るのですから。
トワイニング社は、トーマス・トワイニングがハンプシャーのアンドーヴァーに本社を構え、1706年にロンドンのストランド通りに世界で初めて茶店「トムズ・コーヒーハウス」をオープンしたことを創業時としています。(現在も創始したその場所、写真のこのストランド通り216番地にて営業中です)
そして、創設から10年後の1717年、店舗を改築し、英国初の紅茶専門店「ゴールデン・ライオン」として改めて開店したのです。
ゴールデン・ライオンでは紅茶の茶葉だけではなく、パーコレーターはじめ茶器や保存のための茶缶など、紅茶に関する製品をトータルに揃えたことで顧客数も増え、ロンドンだけではなく英国中にその名を知られるようになります。
また、1784年には、4代目リチャード・トワイニングの尽力により、英国政府に減税法を成立させたことにより、英国国内は一気に紅茶の消費量拡大に流れてゆきます。
創業時から一貫して紅茶の世界に生き、茶葉の研究に加えて、淹れ方に関しても努力を重ねたことで、ロンドンのみならず、英国でのトワイニングの知名度は大きく、また、紅茶の名門としてヨーロッパにもその名を知られようになったことで、1837年、ヴィクトリア女王の時代、念願だった英国王室御用達の称号を付与されるのです。
それは、既に多くの紳士服や宝飾関係の店に付与されていた御用達の冠でしたが、紅茶の世界では初めてという快挙でした。その喜びは大きく、今なお、トワイニングにとって名誉あるものとなっているのです。
また、驚いたことに、日本には御用達ブランドになってから50年後の1906年という早い時期に輸出が開始されているのです。明治時代初期です。なぜだとお思いになりますか?
それは1902年に日英同盟が結ばれたからでした。同盟国として緊密度を増した両国は、国の産物を交換することにより、お互いの国の経済効果を狙ったのです。
もちろん、その頃は既に英国との絆は強く結ばれつつあった日本ですから、紅茶だけではなく様々な分野で、情報を交換し合っていましたし、日本は英国をお手本として近代化を図っていたのです。
ですから、紅茶の輸入は、日本にとっては社交辞令的なものもあったかもしれませんが、遠い異国の産物を輸入したという実績を作ったことで、政府は以来、海外の国の様々なものの輸入を本格的に検討するきっかけとしたのです。
そして、1956年、トワイニングは既存のティーバッグ(ティーバッグは1906年、NYの貿易商のトーマス・サリヴァンが開発)を改良し、採用へとこぎつけるのです。もちろん、その開発・採用は画期的なものとなり、売り上げは上昇。現在もティーバッグの売り上げは相当数を超えるもので、今なおその功績は光輝く快挙となっているのです。
現在はアソシエイテッド・ブリティッシュ・フーズの傘下にあるトワイニングですが、10代目となるスティーブン・トワイニングはトワイニング社の取締役広報部長を務め、祖先が創立した紅茶の老舗を見守っています。
写真は創業時と同じ場所で300年余も営業を続けるトワイニングの本店です。
悠久の時の経過を経た歴史的な建造物としても知られるここでは、アールグレイはじめレディグレイ、ダージリン、そして、オリジナルのプリンス・オブ・ウェールズなど様々な銘茶が販売されています。
長い歴史を経た老舗ですから、店内は創業時の18世紀初期の面影を色濃く残し、シックな雰囲気に包まれています。また、清らかなストランドの鐘の音色に染まった古き良き時代の雰囲気も漂います。
もし、あなたがストランドを訪れることがありましたら、是非、立ち寄ってください。
ここは英国の老舗が何たるかを垣間見ることのできる数少ない店のひとつだと思いますから…。
(トラベルライター、作家 市川 昭子)
※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。