今年の春闘の好成績(平均妥結額6,711円・前年比1,233円増・賃上率2.19%)はほんの一部の大企業のこと


厚生労働省が今日発表した「平成26年 民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」によると、今回の春闘に係る集計結果は次の通り。

【集計対象】
○資本金10億円以上かつ従業員1,000人以上の労働組合のある企業のうち、妥結額 (定期昇給込みの賃上げ額)などを把握できた314社

【集計結果】
○平均妥結額6,711円、前年比1,233円増、賃上率2.19%(賃上率が2%を超えるのは平成13年以来)
○具体的要求額を把握できた284社の平均要求額8,618円(前年比2,702円増)

ここ13年は賃上率が1%台で推移してきたこと(資料2)から考えると、今年の春闘は、数字の上では労働者側にとっては久々に痛快な結果だったように見える。報道ベースでは、政府が経団連など経営側に働きかけた結果だとの評価も出ている。

<資料2>

しかし上記のように、集計対象は「資本金10億円以上かつ従業員1,000人以上の労働組合のある企業のうち、妥結額 (定期昇給込みの賃上げ額)などを把握できた314社」でしかない(資料1)。厚労省が毎月発表している「毎月勤労統計調査」で直近のもの(資料3)と比べると、春闘の結果は、上記の【集計対象】の企業に係る結果でしかないことが改めてわかる。

<資料1>


<資料3> ※画像をクリックして拡大

春闘の結果が例年になく芳しかったことそれ自体は好事ではある。ただ、広く末端経済にまで芳しさが広がるかどうかは、今後の各種統計を見ていかないとわからない。春闘の結果は、あくまでも【集計対象】となったほんの一部の企業に関することでしかない。

(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。