今月、厚生労働省が「障害者虐待の状況」をとりまとめて発表した。概要は次の通り。
1)
使用者による障害者虐待が認められた事業所は253事業所
虐待を行った使用者は260人
(事業主215人、所属の上司29人、所属以外の上司2人、その他14人)
2)
虐待を受けた障害者は393人
(知的障害292人、身体障害57人、精神障害56人、発達障害4人)
3)
使用者による障害者虐待が認められた場合に採った措置は389件
・労働基準関係法令に基づく指導等341件(87.7%)(うち最低賃金法関係308件)
・障害者雇用促進法に基づく助言・指導37件( 9.5%)
・男女雇用機会均等法に基づく助言・指導2件( 0.5%)
・個別労働紛争解決促進法に基づく助言・指導等9件( 2.3%)
障害者虐待防止に関する制度は、一見すると雇用者側に厳しく、労働者側(障害者側)に多大な配慮をしたかのようだ。しかし、あまりにも厳しい運用が行われると、雇用者側・労働者側の双方が共倒れになりかねない。
資料1は『障害者虐待の具体例』であるが、雇用者側にとってわかりにくいだけでなく、労働者側に過度の期待を持たせてしまいかねない内容だ。それを受けて資料2のような救済スキームが用意されているが、これでは労使双方の繋ぎ役が不在なため紛争解決が円滑に進まない可能性がある。個別の労働者(障害者)と雇用者を繋ぐ役割を担う機能が必要だ。
<資料1>
<資料2>
因みに、一般の民事上の個別労働紛争の件数は、近年、資料3のように推移してきている。これとの比較において、障害者雇用に係る紛争件数が多いか少ないかを考えてみることも重要だ。
<資料3>
(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa)
※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。