中国進出する外資が直面する「法律の壁」


中国国内にて、起業を始めようとした外資企業には、様々な問題が発生することがある。

その中でも、法律の壁にぶつかり頭を抱えてしまう企業は枚挙にいとまが無い。今回は、外資企業が中国国内で起業する際に直面するであろう法律の問題を、遼寧省法大弁護士事務所弁護士の潘秀麗氏へのインタビューを通じて紹介していこうと思う。

1. 外国企業が中国で起業するにあたり、一番厄介な法律の壁とは何か?

関連する法律と法規の多さにあると考えています。まず、日本の企業が中国で起業する場合、「中華人民共和国会社法」の会社設立に関する規定に基づく必要があります。さらに、外国企業が中国で会社を設立する場合に、中外合作経営企業・中外合資経営企業・独資企業という3つの形態を取ることが出来ますが、其々の形態に合わせて特別法も設けられています。大まかにいうと

●中外合作経営企業:「中華人民共和国中外合作経企業法」が適用される

(特徴)
・契約式の合営企業
・合作企業の登録資本に外資資本の出資法定比例の要件がある
・企業は組織管理、利益の分配、リスク責任の負担などについて両者間の契約により約定できる
・会社形態の選択が多様化
・中国の企業または、その他の経済組織との合作のみ可能、中国の個人との合作は不可

●中外合資経営企業:「中華人民共和国中外合資経営企業法」が適用される

(特徴)
・企業の登録資本に対して外国資本の比例が法定されていている
・登録資本と投資総額との比例が法定されている
・有限責任公司の形態のみ
・中国の会社、企業またはその他の経済組織との合営のみ可能、中国個人との合営は不可

●独資企業:「中華人民共和国独資企業法」が適用される

(特徴)
・外国の資本が100%、初期投資額が大きい
・自主核算、自主経営
・『産業指導目録』で独資企業の設立が認められない場合がある。

他にも外貨管理条例および関連の他の法律、法規が存在します。これに加えて、各地方が自分の経済状況に合わせた地方条例などももうけられています。

外国企業は中国に置いて会社設立する際には、以上定められた条件を全てクリアする必要があります。これは、中国が日本の様に会社法に基づく登録制ではなく、国による審査批准制度をとっていることに由来します。日本であれば、外国人でも日本人でも書類の提出さえ整えば、起業が出来ますからね。

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日本のそれとは大きく異なっていることからも、この煩雑さなどが中国で起業を始めとした外資企業が、中国で会社設立の際に大きく直面する問題の一つではないかなと思います。


2. 以前、営業税が免徴される場合があると聞いた。この詳細を教えてください。

確かにあります。しかし、「営業税から増値税への変更引継ぎ政策の規定」(財税【2013】106号営改増附件3)の第一条において、これまでの営業税の免徴を増値税の免徴に変更されていますので、今現在では営業税の免徴ではなく、増値税の免徴という定義になります。

ここで「営業税」と「増値税」の違いについて簡単に説明します。

営業税とは納税対象となる中国国内の課税サービスの提供、無産資産の譲渡や不動産の販売を行った会社と個人が取得した営業額に対して徴収した税金のことを指します。一方で、増値税とは、中国国内で貨物の販売や加工・修理整備サービスの提供、輸入貨物を行った会社や個人が得た増値額に対して徴収した税金のことを指します。また、営業税はグロスの売り上げに課税されること【営業額×税率(増値税と異なり、収入に対応する費用にかかった税金は控除できない)】に対し、増値税は付加価値をベースに仕入れ税額控除が行われる【売上増値税額-仕入増値税額(一般納税人の場合、仕入時の税額を控除できる)】ということになります。

営業税から増値税への変更によって、二重課税の回避が出来るようになりました。そのため、一つの重要な減税政策となっています。

そして、「免税対象」についてですが、今回増値税の免徴へと変更された第一条の四項においては、納税者は技術譲渡、技術開発およびそれと関連する技術コンサルティング、技術サービスを行った場合、増値税の免税対象となると書かれています。これは納税対象者すべてに当てられたものになりますので、つまりは国内企業、外資企業共に言えることです。

しかし、これは全ての企業に当てはめられるというわけではありません。納税者は技術譲渡を行う際に、双方が交わした書面による契約は納税者の所在地の省レベルの科技の管理部門に認定申請を行い、認定されて初めて免税の対象となるのです。ですので、申請の際にも批准制が採用されていることがわかりますね。

潘秀麗氏:日本国立九州大学法学府博士課程修了後、遼寧法大法律事務所弁護士として在籍。在日歴12年。

(岸 里砂)

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。本稿は筆者の個人的な見解です。