「リトマス紙付き」ペットボトルが売られる中国食品の惨状


この前近所のスーパーに行ったら、いつも買う水に何かオマケがついているのが目にとまった。よくよく目を凝らして見てみると、そのオマケとは何と《精密试纸》と書かれてた紙ではないか。精密试纸、つまりリトマス紙である。思わず我が目を疑ってしまった。


文系人間の私は中学以来リトマス紙を見たことはないので少し興奮した・・・が、それよりも何よりも、私は今まで生きてきた二十数年の間にリトマス紙を付けた飲料水を見かけたことはない。

中国に住んでいると、良くも悪くも奇想天外なニュースを耳にすることが多い。特に食品の偽装についてのニュースは、中国に来て2年経つが、未だに話題に事欠くことがない。

訪中したばかりの頃はヨーグルトの凝固剤として紳士靴の裏地の素材を使っていたということが話題となっており、頭を殴られたような衝撃を覚えた。そして、その後あらゆる洗礼を受けた後は、「発癌性物質有り」との記事を見る度に、またかと諦めの気持ちを抱くまでに心が強靭になってしまった。

日常生活においては、街中を歩けば羊肉焼肉と表記されているのに実際にはウサギや犬の肉を使っているなんてこともある。終いには、中国で有名な検索エンジン百度に「中国 食品問題」といれて検索するだけで、あれよこれよと数多くの事件が出てくる。

最早ここまで来ると、何を信じて、どうやって身を守るのかさえも分からなくなってきそうだ。

食品に対する安全が未だに解決する見通しがたたないこの情況の中で、中国人消費者の製品に対する不信感は近年では慢性化してきている。そのため消費者達の中には高水準であろうと期待する外国製品、とりわけ日本製品へ活路を見出す人達も少なくない。

現に知り合いの中国人女性は、自分の赤ん坊のミルクは絶対に中国製品を与えないという徹底ぶりを発揮している。そのことについて質問をしたときに、

「中国のものは何が入っているか分からない。日本の厳格な基準の下で作られたものなら安心出来るから、これからも中国製品を買う予定はない」

と彼女は語っていた。

そんな中、偽装問題が発覚し顧客離れが進む企業は、製品の改善をすることで、流れて行く顧客の流れを食い止めようと必死だ。

今回私が購入した農夫山泉という自来水(蒸留水)ブランドも実はそのうちの一つ。この会社も一年前まで国の定めた基準値を超えていないのに出荷され続けていたことが発覚し大きな問題となっていた黒歴史がある。

「吃的死,喝的死,连呼吸都会死(食べても死ぬ、飲んでも死ぬ、息しても死んじゃうんだ)」

当時この事件を受け、とある消費者が掲示板にあげていたコメントである。まさにこの一言に中国の世相を反映していると言っても過言ではないだろう。

人に与付けた不信感を拭い去るのは容易なことではない。そのため、このオマケのリトマス紙は、消費者が自分自身で基準値を測定することで、過去の問題を無くし安全性を向上させたことを、消費者自身に確認してもらうといったPR手段の一つなのだろう。(因みに中国標準規定值pH6.5-8.0であり、筆者が試した時はクリアした)


中国では、いくらGDPが世界一になったとしても、こういう'質'の部分は依然として置き去りにされている状態だ。中国政府は関税率を下げ外資製品をもっと国内に入れ込むか、管理技術や生産工程の見直しを他国から輸入をしない限り、国民の自国の食品産業への信頼は確保できないだろう。

(岸 里砂)

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。