社会保障のあり方「受益に見合った負担」から「負担に見合った受益」へ



高齢者が増えれば、年金を受ける人や介護・医療サービスを受ける人の数も増える。その費用負担を子や孫の世代に大きく負わせことは、少子高齢化が今後ますます進むことが確実な日本では、かなり深刻な問題である。高齢者にもそれなりに負担をしてもらおうということで、高齢者の自己負担増や消費増税という話になっている。

年金・医療に関する高齢者の費用負担額を増やすだけで、社会保障システムを維持することはできるのか。介護分野では、介護サービス費用の伸びを抑制していこうという動きが出始めている。介護分野の4倍以上の財政規模である医療分野では、なおさら、医療サービス費用の伸びを抑制していく必要がある。

旧自公政権では、2007年度から5年間、社会保障費の伸びを年2200億円抑制する方針を掲げた後、高齢者などの反発で撤回したという経験がある。安倍総理は、この難業に再チャレンジすべきだ。社会保障システムは、日本の国家財政の中で最大の利権がある場所で、その大宗は年金と医療。社会保障システムを持続させていくには、高齢者の負担増だけでなく、高齢者への給付減を同時に進めていかないといけない。

 今開かれている臨時国会では、社会保障制度改革プログラム法案が審議されている。「受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度の確立を図るため、医療制度、介護保険制度等の改革について、(1)改革の検討項目、(2)改革の実施時期と関連法案の国会提出時期の目途を明らかにするもの」という内容。要するに、少子高齢社会が進むと医療・介護分野などへの支出が増えるので、高齢者にも応分の負担を課すしかないということだ。一理あるが、別の視点もある。それは、社会保障サービスの支出を減らすこと。

『受益に見合った負担』を、とよく言われる。しかし、『負担に見合った受益』を、とは考えないのか。無い袖は振れない ―― これを今後の社会保障の基本にしていかないと、財政がもたない。無い袖を振り続けることはできない。みんな、わかっていることだ。

(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川和男 Twitter@kazuo_ishikawa