名画「ローマの休日」で、オードリー・ヘプバーン扮する王女がジェラートを食べたシーンで一躍有名になったこの“スペイン広場 Piazza di Spagna”は、「ローマの休日」を語る上では欠かせない広場であり、ローマ随一の観光ポイントでもありますね。それゆえ、連日、国内外から多数の観光客が訪れ賑わいを見せていますが、それは今に始まったことではないのです。
実は、16世紀という500年余も昔から多くの人々を迎えているローマにとっては商業的に重要な広場であったのです。そして、商業の発展に伴って内外から多くの人が集まるようになり、1800年代には広場を取り巻くようにしてホテルやみやげ物店が軒を連ねるようになり、ローマの一大観光地としてその名をヨーロッパ中に馳せるのです。
また、広場東側に設置された138段のバロック様式のこの階段の設計は、フランチェスコ・ディ・サンクティス。トリニタ・ディ・モンティ階段 Scalinata della Trinita dei Monti と呼ばれ、階段下に広がるスペイン広場と正面に建つトリニタ・ディ・モンティ教会、そして、教会が建つ一帯のピンチョの丘 Pincio を繋ぐために1723~26年にかけてフランスの外交官の寄付によって造られました。
階段は、トリニタ・ディ・モンティ階段という名前があるにもかかわらず、通称「スペイン階段」と呼ばれるのは、当時、広場の傍らに建っていたスペイン大使館にちなんだもので、スペイン・マドリッドのスペイン広場とは何ら関係はありません。
また、階段の上部中央に聳える2つの塔を持った教会は、トリニタ・ディ・モンティ教会 Chiesa della Trinita dei Monti。フランスのルイ12世の命で1502年に着工し、80年もの時間を費やし、1585年に教会として開かれたものです。
ゴシック様式の壮麗な内装に覆われた内部には16世紀のフレスコ画などが保存されていますので、広場を訪れたら、そして、広場前に延びるブランドショップが軒を連ねるコンドッティ通りを訪れたら、ぜひ、教会にも足を運んでください。
また、138段の階段には初夏の季節、このようなつつじの花があふれ、華麗な広場としてファッションショーなどが催されたりします。そして、ローマの風物詩として初夏の1ページを華やかに飾るのです・・・。
夜にはライトアップされた幻想的な“ツツジのスペイン階段”を見ることもできます。
もし、初夏にローマを訪れることがあるならば、ぜひ、広場へいらっしゃってください。
夕刻から夜にかけての階段と階段上部の踊り場から見る広場周辺の情景は、『ローマの休日』のグレゴリー・ペックが扮する新聞記者の部屋から見る同じ情景を楽しむことができますから・・・。
アン王女が感じた初夏のロマンチックな甘い香りがするローマの情景を楽しんでください。素敵ですから・・・。
《余談》彼の借りていた部屋は広場のすぐ近くにあり、今もその館と部屋は現存しています。そして、アン王女が酔って運ばれたあの部屋から見る光景は、今も何ら変わりなく同じなのです。
(トラベルライター、作家 市川 昭子)